小児期の矯正治療にはケースにより適齢期があります。私は小学校の学校歯科医をしておりますが、学校検診において小学校4、5年生くらいで、矯正装置ブラケットが付いておられる方を結構お見受けしますが、それらを見る度に早すぎるとついつい思ってしまいます。それはこの時期乳歯が残存しますが、その歯までダイレクトボンディング装置を装着するケースがいらっしゃるからです。この時期に歯並びを整えても、その後に永久歯の萌出が控えている訳で、その時に歯並びは崩れてしまうことが予想されます。また私の身の回りには中学生の時に、矯正治療をして歯並びを綺麗にしたという方で、現在歯並びがガタガタになってしまっている方々が結構多くいらっしゃいます。つまり、矯正治療時期が早すぎるために成人した時に後戻りが起きてしまうためです。小学校、中学校時期の矯正治療はその後のリテーナ(保定装置)をかなり長い間付けられる方というのが必須条件で、治療開始すべきであり、大概の学生の方々はリテーナ装着をやめてしまわれるために、成人期に後戻りがおきます。
例えばケースにはよりますが、矯正治療は逆算の考え方が良いと思われます。20歳の成人式の時に綺麗な状態であるためには、治療期間の2年前の17〜18才くらいに歯列矯正を行うとこの時期に綺麗に保たれます。
しかしケースによっては、顎のズレがあり早めに治療開始しないと顎のズレが治らないケースや、非抜歯で治したいケース等は早めに開始しないといけない場合があり、一概に治療を遅らせた方が良いとも言えないため、判断は難しいと思われます。ケースにより適齢時期があるため、一度矯正相談をしてこのケースは早期治療が必要なのか、もう少し後でも大丈夫なのかを検討することがいいと思われます。
大丈夫な範囲内で、できるだけ遅めというのが綺麗な歯並びを維持できる理想と考えます。
しかし逆に20代後半から30才を過ぎてしまうと、顎骨、歯槽骨が固定し、骨代謝が弱まり歯の移動がしにくくなってくるため、歯列矯正を望むのであればこの時期よりは早い方が良い。この場合も相談が必要と思われます。
適齢期判断はとても難しい事と思われますが、小学校時期の『早くしないと治らない』の言葉には惑わされてはいけません。この部分は親御さんの勉強が必要と思います。